《Dr.石井のしつけ講座》

◆犬の服従訓練(しつけ)
 と問題行動の予防

01 はじめに

02 犬の本能・習性と正常行動

03 犬の学習理論

04 社会化期

05 しつけ:服従訓練とオペラント訓練技法1

06 しつけ:服従訓練とオペラント訓練技法2

07 問題行動と行動療法1- 攻撃行動について -

08 問題行動と行動療法2- 攻撃行動について -

09 問題行動と行動療法3- 攻撃行動について -

10 問題行動の予防

.
《Dr.石井のしつけ講座》
トップ

.

犬の服従訓練(しつけ)と
問題行動の予防[2]

「犬の本能・習性と正常行動」

.

犬は、長い歴史のなかで人間により種々の目的に適した性質を持つように選択的育種が繰り返されてきました。 その結果用途の異なる犬種が改良されてきましたが、犬種により形態的特徴や行動の特徴があります。 しかし、遠い祖先のオオカミから受け継いだ本能・習性は現在の犬にも継承されていて、犬の正常な行動(社会行動)のなかに見ることができます。 継承された主な本能には、繁殖本能(生殖本能、養育本能)、社会本能(群棲本能、支配性本能、服従性本能、警戒本能、防衛本能、監守本能、闘争本能、帰巣本能など)、 自衛本能、逃走本能、運動本能(遊戯本能)、栄養本能(探索本能、追跡本能、持帰本能)などがあります。
しかし犬は、犬種により行動様式にはかなりの違いがありますし、また、同じ犬種であっても個体差があるのも事実です。 現在の犬が持っている主な正常行動を以下に挙げてみました。

1:支配性(優位性)行動と服従性行動(支配階級制)
 犬は祖先のオオカミと同様に社会性を持つ動物で、群れを作り生活します。その群れの中では上下関係をつくり群れを統率する順位制度があるのです。 この制度により優位のものが劣位の犬に対して食物や交配相手といった全ての限られた資源を得ることにより統制されていて、平和な群れが維持されているのです。(群棲本能、支配性本能、服従性本能)。
 犬が家庭で飼われた場合には、その家族が自分の群れであり、その中で順位づけがされます。ですから犬を飼う場合には、犬の順位を家族の中で一番下(劣位)にすることが犬を精神的に安定した状態にし、 飼いやすい犬にしつけることができるわけです。どんな犬にも支配性本能と服従性本能の両者を持っていますが、どの相手にどちらの行動をとればいいのかは学習が必要なのです。

A:犬が服従性を示すボディーランゲージ
   @ 犬が目をそらす。
   A 能動的(積極的)服従
     姿勢を低くして耳を後ろにねかせ、尾を垂らす。
     飼い主の顔や口元をなめる
     (子犬が母犬に餌をねだる時の行動に由来)。
   B 受動的服従
     横にひっくり返って、片脚を宙にあげ、外陰部を露出する。
     少量の尿をもらすこともある。
     (子犬が母犬に陰部をなめてもらい排尿を促す行為に由来)。

B:犬が支配性を示すボディーランゲージ
   @ 飼い主をにらむ。
   A 耳を前向きに立て、尾をあげ、歯をむく姿勢。
   B 飼い主に前足でのしかかる姿勢。
   C ボディーランゲージ以外にも支配性行動を示す表現として
     次のような行動をとることがあります。
       ※ 自分の気に入った場所から離れない。
       ※ 口にくわえたものをはなさない。
       ※ 言うことをきかない、無視するようになる。
       ※ 触られるのを嫌がる。
     など犬が「自分の思いどおりになる」といった態度をとった時は
     支配意識を持ったと判断しなければなりません。

2:縄張り性行動
 犬は飼われている家を縄張りと看做し、近づいてくる(侵入しようとする)人間や動物に対して縄張りを守ろうとして吠えます(警戒本能)。 特に犬が自分の縄張りと思っている境界付近で顕著で、犬が吠える最も基本的な習性です。 一般的には、犬が家庭内で優位にある時にこの行動は激しくなります。

3:狩猟行動と採食行動
野生のオオカミは群れで組織的に狩猟を行います。時には巣穴から遠く離れた所まで獲物の臭いを頼りに追い(捜索本能)、発見した時には、逃げる獲物を捉えようと走り(追跡本能)、 捕った獲物を巣穴に運んで(持来本能、帰家(巣)本能)子供に与えたりします。
犬が動くものを追いかける行動はこの狩猟行動に由来するものなのです。 犬がボールをくわえてきたり(持来本能)、走る人や自転車などを追いかけたり(追跡本能)、警察犬が臭覚を使い犯人を追う(捜索本能)のも、補食性行動によるものなのです。
ただし、この行動は犬種や個体差がかなりあり、全ての犬が同程度の行動をとるわけではありません。

4:遊戯行動
 犬は子犬でも、あるいは成長して大人になってもよく遊ぶ動物です。子犬にとっての遊戯行動は将来必要となる行動の訓練といった意味合いがあり、必要なことでもあります。 たとえばじゃれて遊ぶ中で噛みついて良い許容範囲を学んだり、優位と劣位の関係を示すしぐさを学んだりするのです。
 成犬になっても頭をさげ尾をあげる遊戯姿勢をとり、性的行動、攻撃行動、あるいは追跡捕獲行動を遊戯行動として行うことがありますが、本気であるかの判断が難しいこともあります。
 飼い主と犬の間の遊戯行動は、支配性本能(権勢本能)から派生したものと考えるべきで、脚で飛びついたり、あまがみなどはさせてはいけません。 さらに支配的傾向のある犬の飼い主は、綱引きなど闘争的な遊びはさけるべきでしょう。

5:繁殖行動(生殖本能)
 犬が性成熟に達するのは生後6〜10ヶ月頃です。一般に小型犬は大型犬に比べ早熟です。 雄では片脚をあげて排尿をするようになった時で、雌の場合は発情の開始(膣からの出血がみられる)で性成熟に達したことになります。
 雌は発情前期(発情出血がはじまった直後)には雄を寄せつけませんが、交尾期(発情出血後10日前後)には雄を許容するようになります。犬の妊娠期間は平均63日ですが、 妊娠しなかった場合は年に2回(1回のこともある)発情を繰り返します。

6:母性行動(養育本能あるいは母性本能)
 雌犬が出産する場合は安全な場所で出産しようとします。それは外敵から子を守ろうとする本能からです。 出産後も同様で、たとえ飼い主であってもそばに寄せつけないことがあります。母子間の絆は非常に強いものなのです。
 分娩から離乳するまで全てのことを母犬が行い子育てするのが普通ですが、中には子育てをしない犬もいるのでそうした場合には人が手助けしなければならない事もあります。 飼い犬が出産する時は、住み慣れた場所で人気のない所に産室(小さすぎず、大きすぎないもの)をつくり、薄暗い環境にする事が必要です。

7:排泄行動
 オオカミは山の斜面などに掘った巣穴で生活します。巣穴を汚さないように、あるいは他の動物に巣穴を見つけられないように、巣穴から離れた場所に排泄する習性があります。 犬も同様の習性があるため、家の中で犬を飼う場合はハウス(寝床)から離れた場所にトイレを作らなければなりません。 またハウスはあまり広いものでなく、体の方向が変えられる程度であまり明るくないほうが良いでしょう。


copyright(c)2003 [Evergreen Dog Field] All Right Reserved
.