《Dr.石井のしつけ講座》

◆犬の服従訓練(しつけ)
 と問題行動の予防

01 はじめに

02 犬の本能・習性と正常行動

03 犬の学習理論

04 社会化期

05 しつけ:服従訓練とオペラント訓練技法1

06 しつけ:服従訓練とオペラント訓練技法2

07 問題行動と行動療法1- 攻撃行動について -

08 問題行動と行動療法2- 攻撃行動について -

09 問題行動と行動療法3- 攻撃行動について -

10 問題行動の予防

.
《Dr.石井のしつけ講座》
トップ

.

犬の服従訓練(しつけ)と
問題行動の予防[3]

「犬の学習理論」

.

本能的な行動以外の、動物にとって有益な行動パターンをどのようにして動物が獲得するかを実験的に集大成して確立した理論です。 犬の学習理論だけで犬の発育段階におけるすべての認知過程を理解・評価できる訳ではありませんが、犬の行動を予測したり、問題行動を予防あるいは変更させるためには ぜひとも知っておいた方が有利な理論です。犬が新しい行動を学習する場合、2つの方法があります。すなわち、古典的条件づけとオペラント条件づけ(道具的学習)です。

1:古典的条件づけ
古典的条件づけとは、不随意的・反射的な反応を基礎とするものです。すなわち、通常では誘発される事のない状況下で、無意識的な行動あるいは反射的な行動を、 動物が学習する過程をいいます。
反射反応(無条件反応)を起こさせる自然の刺激(無条件刺激)に、反射反応とは関係のない中性刺激を繰り返し与えると、やがて中性刺激だけで反射反応が発現するようになります。 この状態での中性刺激を条件刺激、また反射反応を条件反射といいます。これが古典的条件づけといわれるものです。ロシアの研究者のパブロフの行ったいわゆる「パブロフのイヌ」の例に代表されるもので、 イヌに餌を与える時にベルの音を聞かせていると、餌を見せなくてもベルの音だけでイヌがよだれを垂らすようになる事を発見しました。 この場合は無条件刺激が餌、中性刺激(条件刺激)がベルの音、反射反応(条件反射)がよだれの分泌になります。
家庭でのトイレのしつけは本来この古典的条件づけによるものです。排尿や排便といった生理的反応では、排泄をしたいという体内感覚と前にした排泄の臭いなどの 環境刺激が無条件刺激として働きます。ですから、家庭での訓練は、排泄反応を環境刺激とだけ結びつけるプロセスといえます。

2:オペラント条件づけ(道具的学習)
与えられた状況下(号令)で生じたある一定の自発的行動(反応)に続いて報酬(褒美)を与える事によって、動物がその行動を学習する過程をいいます。 すなわち号令→反応+強化(報酬)によって一定の行動を習得させる過程で、この過程が続けて起こる事がきわめて重要となります。
オペラント条件づけは1937年にアメリカの行動学者B・F・スキナーが用いた方法です。 スキナーの箱という箱の中にテコ棒が仕掛けられていて中に入ったネズミが棒を踏むと餌が与えられる仕組みになっている箱で、はじめはネズミが偶然に 棒を踏む事により餌を得ましたが、以後それを学習し条件反射が強化されこの行動を完全に学習しました。 このメカニズムすなわち、動物は刺激により条件反射をとり、報酬を得る学習は積極的で強制することなく学習する事をオペラントと名付けました。 動物の条件反射行動が道具的に学習されるので道具的学習ともいわれます。 オペラント条件づけを犬の訓練に積極的に応用するとき、オペラント訓練技法ともいわれます。
問題行動によっては学習してしまった結果によるものがかなりあります。例えば、飼い主の注目を注ぐといった行為は犬にとって報酬になります。

@ 強化
動物にとって報酬となる出来事のこと。ある刺激(犬の場合号令)に続く行動の直後に報酬となる出来事が加わると、その行動が繰り返される確率が上昇します。

 T:強化のタイミング
   報酬を与えるタイミングが重要で、
   反応と同時に与えなければなりません。
 U:強化の度合い
   報酬が魅力的であればある程、その効果があると思いがちですが、
   学習させたい反応が複雑であったり、静かにじっと我慢させる行動を
   必要とする場合にはかえって逆効果になることがあります。
 V:強化スケジュール
   反応を常に維持するには間隔を開けて不定期に報酬を与えた方が
   よいでしょう。
 W:二次的強化
   本来の報酬ではなく、報酬と一緒に与えることによって、
   強化として働く二次的な報酬のことです。
   ほとんどの犬は飼い主との相互関係が本質的な報酬であり、
   ほめ言葉や愛撫などは強化としては一番の報酬となります。

A 消去
条件づけられた特定の行動を消滅させることで、古典的条件づけでも用いられる用語です。 その方法は、行動が強化されないように徹底することが最も安全で信頼性の高い方法です。 消去とは別の反応を新たに学習することで、忘却ではありません。 かつて強化を与えられた反応が突然強化を与えられなくなると、はじめはその反応(行動)がより頻繁に認められる(消去バースト)ようになることがありますが、 しだいに減少していきます。

B 反応形成
希望する複雑な反応(行動)を徐々に教え込む場合に用いられる方法。 複雑な行動を段階ごとに訓練する場合などです。

C 刺激般化
ある特定の刺激に対して行動が条件づけられてしまうと、類似の刺激にたいしても同様の行動が生じることがあり、これを刺激般化といいます。 例えば、花火の音にパニックになった場合、他の大きな音(雷など)に対してもパニックになる場合などです。

3:罰
罰とは特定の行動が再発する可能性を減らすために、その行動の最中か直後に嫌悪刺激を与えたり、報酬を無くしたりすること(負の強化)をいいます。 罰は訓練する場合にとても効果的で最もよく使われる方法と思われています。しかし特殊な場合に遠隔罰を用いた嫌悪学習などでは効果的な場合がありますが、 直接罰は恐怖感や不安感を与え問題行動をより悪化させてしまうことがあり、あまり勧められる方法ではありません。 それより、報酬、消去、気をそらす、別の行動に仕向けるといった方法で行動の再発を減じる方が、時間はかかりますが最も確実性があります。 罰は犬が恐怖を感じて攻撃性を示したり、罰を与える人を避けてしまうようになったりすることがあるのです。
罰には下記のように直接罰、遠隔罰および社会罰があります。

  T:直接罰
    犬に対して直接的に与える罰で言葉で叱る、叩く、
    首を掴むなどです。
  U:遠隔罰
    無駄吠え防止首輪、水鉄砲、缶からや雑巾投げなどにより犬が
    罰を与える。
    人間がわからないように遠隔操作によって与える罰。
  V:社会罰
    無視やタイムアイト。


copyright(c)2003 [Evergreen Dog Field] All Right Reserved
.