《Dr.石井のしつけ講座》

◆犬の服従訓練(しつけ)
 と問題行動の予防

01 はじめに

02 犬の本能・習性と正常行動

03 犬の学習理論

04 社会化期

05 しつけ:服従訓練とオペラント訓練技法1

06 しつけ:服従訓練とオペラント訓練技法2

07 問題行動と行動療法1- 攻撃行動について -

08 問題行動と行動療法2- 攻撃行動について -

09 問題行動と行動療法3- 攻撃行動について -

10 問題行動の予防

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犬の服従訓練(しつけ)と
問題行動の予防[7]

「問題行動と行動療法1
 - 攻撃行動について -」

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犬の問題行動とは飼い主が困ったとき、あるいは問題であると思ったとき"問題行動"となるのであって、かなり飼い主の主観によるものがあります。 犬にどんな行動をされたら困るかは飼い主の生活環境や考え方によって異なって当然ですし、飼い主は困らなくても周囲の人間に迷惑をかけ飼い主が困るという場合もあります。 ここでは、「問題行動を飼い主にとって容認できない行動、及び、犬の自己障害的行動」を問題行動と定義します。

問題行動で一番多いものは犬がα(アルファー)となってしまい自分の思い通りにならないと威嚇や攻撃をする優位性攻撃(権勢症候群)ですが、次いで、人や他の動物に吠えかかる攻撃行動、 不適切な排泄行動、むだ吠え、留守番中に家具を噛みちぎる破壊行動などがみられます。
問題行動を治療することを獣医学では行動治療といいます。すなわち、飼い主が自分の飼い犬を問題と認識しそれを治そうと思ったとき初めて治療が可能となります。 獣医師の手法は医学的な問題なのか、あるいは行動上の問題なのかを精査し@環境の変更、Aホルモン療法、B行動療法(行動修正も含まれる)、C薬物療法などを単独あるいは組み合わせて行います。

ここでは、主な問題行動の特徴と飼い主にも可能な行動療法を中心に説明します。しかし、とても「凶暴」に育ててしまった犬の場合には獣医師や訓練しに相談するべきであることはいうまでもありません。 また問題行動はいくつもの行動が重なって起こしていることが多く、素人判断は禁物です。

(1)問題行動(攻撃行動について)
犬の攻撃行動は唸る・歯をむく・噛むの三種類があり、同時に攻撃の表情や姿勢をとります。

優位性行動
犬が家庭(群れ)の中で優位(ボス)であるとみなし、あるいはその優位(順位)を誇示するためにみせる攻撃行動(α-シンドローム、権勢症候群)です。 この問題行動のほとんどは飼い主が犬のいいなりになった結果(服従性行動をとった結果)によるものです。代表的な行動を次に例示します。
・食べ物やおもちゃをとろうとすると威嚇あるいは噛みつく。
・散歩でいつも先頭に立ち自分の行きたい方向へ引っ張る。
・散歩中に他人や他の犬に吠えかかったり、リードをくわえたり、
 飼い主の足にとびついたり噛んだりする。
・飼い主にとびついたり吠えたりする。
・飼い主の手をじゃれて噛む。
・排泄後地面を引っかく。
・飼い主の言うことをきかない、無視する。
・飼い主にマウントする。
<対策>
行動療法:最大のポイントは服従訓練のやり直しです。

縄張り性攻撃行動
飼い主の家や庭を犬が縄張りとみなしていると、郵便配達人や訪問者に対し縄張り性攻撃行動を起こします。これは犬が吠えることによって侵入者を撃退したと 学習してしまうもので(本来は仕事を終え帰るのですが)、毎日繰り返すことにより学習が強化されてしまうのです。しかし、こうした訪問者に吠えるからと言ってその行動が全て縄張り性攻撃行動で あるわけではありません。支配性攻撃行動であったり、縄張り性攻撃行動と支配性攻撃行動の組み合わさった攻撃行動などがあります。
ですから訪問者に吠えたから縄張り性攻撃行動と判断するのは危険です。 素人判断は問題を複雑にし、逆効果になることが少なくありません。縄張りを守る行動というよりは、保守防衛的攻撃行動すなわち、縄張りよりも飼い主を守るためにみられる攻撃行動もあります。
<対策>
・環境の変更
・行動療法:系統的脱感作 and/or 報酬を利用した逆条件づけ。

恐怖性攻撃行動
恐怖誘因性攻撃行動とも呼ばれ、恐れや不安による攻撃行動で、以下に示すような恐怖行動がみられればこの攻撃行動です。
@ 恐怖を示す姿勢(耳を後ろにねかせ、尾を下げる、震える)が
  犬に認められた場合。
A 積極的に攻撃しようとするのではなく、
  後ろに退きながら噛みつこうとしたり、威嚇する場合。
B 狭い場所に閉じこめられるなど、犬が追いつめられたと
  感じるような場合。
  不意に驚くような状況におかれた場合。
先天的に臆病で恐怖性行動を起こす犬もいますが、子犬の時に経験したことが恐怖心と結びついている場合、あるいは社会化が不十分な場合などにみられます。
<対策>
・環境の変更
・行動療法 1)攻撃対象に対する系統的脱感作 and/or 報酬を
        利用した逆条件づけ。
      2)飼い主と犬との関係の再構築
・薬物療法

補食性攻撃行動
補食姿勢(注視、忍び歩き、低い姿勢など)に引き続き起こることが多く、人をはじめ、犬、猫、鳥、等の動物に対して攻撃行動を起こします。 時には自転車や車などに対する場合もあり、素早く動くものによって誘発されることが特徴です。威嚇をしたり、吠えたりしないで攻撃することが補食性攻撃行動によくみられます。
<対策>
・環境の変更
・行動療法 1)飼い主と犬との関係の再構築。
      2)行程対象に対する系統的脱感作 and/or 報酬を
         利用した逆条件づけ。
      3)遠隔罰を利用した嫌悪条件づけ。

同種間攻撃行動(家庭内)
同一家庭内に複数の犬がいる場合、お互いの優劣関係の意識がないことによる犬同士の攻撃行動です。特に同じ犬種、同じ体格、同じ性質、同じ性別のとき起こしやすい。 子犬の時は問題はないのに、成犬になってこうした攻撃行動がみられることが多いようです。社会化ができていなかったり、人間が弱い犬に味方してしまい優劣関係ができないことによる場合がかなりあります。
<対策>
・行動療法 1)順位の確立。
       2)不適切な仲裁の禁止。
・ホルモン療法:雄同士の場合は去勢手術が有効なことがある。

同種間攻撃行動(家庭外)
散歩中に見知らぬ犬にとる攻撃行動で、特に相手の犬が威嚇をしたり、危害を与える意志がないと思われるのに攻撃する行動です。社会化不足、過度の防衛本能、 飼い主を守る防護本能、支配性本能の強い場合などが代表的な例です。
<対策>
・環境の変更:攻撃行動が起こる状況の回避。
・行動療法:他の犬との距離に対する系統的脱感作 and/or 報酬を
       利用した逆条件づけ。
・ホルモン療法:雄の場合去勢手術が有効なことがある。

特発性攻撃行動
何の前触れもなく、突然襲いかかる攻撃行動で、特発性凶暴性症候群とも言われます。このような犬では通常、支配性を示す徴候が見られます。 単色の被毛のコッカースパニエルに多いとされています。非常に危険なため行動療法が不可能なこともあります。
<対策>
・薬物療法
・安楽死

母性的攻撃行動
子育てをしている母犬に近づいてきた人を威嚇するもので、母犬の本能的な正常行動です。従ってこの行動を修正する必要はありません。 これは、支配性攻撃行動の変形とも考えることもできるようです。(子育ての時期には支配性の上昇を認めることが多い。)


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